Heinrich Von Ofterdingen×神代学園幻光録クル・ヌ・ギ・ア Special Site


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インタビュー【杉浦勇紀編】

(8月某日、都内某所にて)

…本作の音楽を担当することになった経緯を教えて下さい。
杉浦「スペクトラルジーンCD版の作業が終わってすぐ…オーケストラの楽曲のデモを大宮ディレクターに聞いていただく機会があったんです。そのときにディレクターから企画の話をいただきまして、それが今回の作品になりました。」

―「ロックとノイズの織り成す現代感」と「モダンジャズテイスト」

…それではそのデモが採用されたということですか?
杉浦「いや、そのデモのほうは今回は全く未使用なんですが…また何かの機会に打ち出せることが出来ればと思っております(笑)。今回の作品のディレクターからの音楽のテーマはロック&ノイズでした。なので、デモとは別に全曲書き下ろしました。」

…へぇ!そうなんですか。ロックやノイズって意外な感じもしますが。
杉浦「企画書を見る限り、あと前作(転生学園シリーズ)のテイストを見る限りでは、和のテイストがあるかな?と思ったのです。でもディレクターからは『ロックとノイズの織り成す現代感』という言葉がありました。割と得意ジャンルだったので、嬉しかったです。」

…今回の作品は現代と大正時代の二つの舞台があるとのことですが、時代によってテイストの違いを意識して変化させるなどのリクエストなどもありましたか?
杉浦「勿論ありました。ですが、ディレクターのほうから『和楽器は控えてモダンに』とのオファーがありました。」

…それも意外ですね。
杉浦「時代差を出すのは、和楽器を使って…例えば琴とか三味線とかでベベンとやれば割と雰囲気出ちゃうものなんですが、それを使わずに時代差を出さなければならなかったので、これは悩みましたね。色々大正時代の音楽なども実際にリサーチしたのですが、極めて童謡的なものか、ジャズの前身的なものしかないんです。そのどちらともモロにやってしまうと、『古い』というテイストが出づらかったんです。そこで昭和のテレビ放送が始まって間もない頃の音楽が現代の人に分かるギリギリ『古い』という認識の音楽という判断のもと、モダンジャズテイストなラインを大正編に使用することにしました。これがバッチリとはまり、大宮ディレクターの発想は凄いなと思いました。」

…大正時代の音楽って、普通知らないですよね(笑)
杉浦「無論誰も聞いたことないでしょう。ようは時代差を打ち出すことが大事だと考えました。」

―デジタルデジタルしていなくてどことなくアナログ感がある音作り

…実際の作業はどんな感じに進んでいきましたか?スペクトラルジーンのサントラ作業後、すぐに今回の作業が始まったということですが。
杉浦「スペクトラルジーンの時はCD版エディットを含めると約80曲に及ぶ…結構長期の作業だったのですが、でもそれはソフトウェアの移行という事情が実はあったんです。例えばMacOSのアップデート、デジタルパフォーマからProToolsへの移行、といった感じにです。時代の波にはやはり逆らえない、というのがありますね(苦笑)。もっとも…スペクトラルジーンを含めた過去の作品と今回の大きな差は、ソフトシンセしか使っていないという点です。」

…それはどういった理由からですか?
杉浦「今まではローランドやコルグの外付け音源を好んで使用してきたんですが…外付け音源における作業のメリットとして『トラックを混ぜる』など圧倒的に作業スピードが早いんですよね。ですが、ダビングする際、当然ケーブルを使ってデータ化するので、どうしてもノイズが乗ってしまうというデメリットがありまして。それに比べソフトシンセサイザーはややCPUに引っ張られるものの、ノイズを完璧に無くすことができ、そういった点ではストレス無く作業をすすめていくことができるんです。」

…デジパフォからProToolsへ移行したのにもやはり何か理由があるのでしょうか?
杉浦「いや、これはもう友達の勧めで…というか、世の中全体のフォーマットがProToolsになってしまったので、泣く泣く導入しました。」

…泣く泣くですか(笑)。
杉浦「ですが、いざ導入してみるとProToolsのインターフェイスは、圧倒的に音質が良く、長時間のプレイバックに耐えうる音像でした。またエフェクトなどプラグインも高品質で特にリバーブなど空間系はとても心地よい…デジタルデジタルしていなくてどことなくアナログ感がある音作りが出来るんです。さすが世界的に定評があるだけのことはあります。乗り換えて良かったです(笑)。」

―現代の混沌とした空気感を出すこと

…アナログシュミなども使ったのでしょうか?
杉浦「部分的には使用しています。例えば、スティーブアルビノがプロデュースしているドラム音源を使用したのですが、それのアンビエンスマイクの単独ツーミックスにアナログシュミレータを咬ますなどといったことはやっています。」

…ゲーム音楽という概念を忘れるくらい生っぽい『ロック』の楽曲が多いという印象を受けました。
杉浦「そもそもゲーム音楽という概念を僕は持っていません。勿論いわゆるゲーム音楽然としたゲーム音楽はなんとなく想像は出来るんですが、例えば海外のゲームソフトウェアではスティーブヴァイやボジオなんかがバンバン参加してたりするんですね。よって、ディレクターから『やっちゃってください』と言われたということもあって…大正編とのギャップをつける上でも、現代の混沌とした空気感を出すことをやりすぎなぐらい分かりやすくロックなテイストを出すことに寧ろ気をつけました。そのほうが大正編に行った時に空気の色に差が出ると考えたからなんです。」

…大正編と現代編の差を出すのにはかなり苦労したと伺っています。大正編で流れる挿入歌に関してもお聞かせいただけますか。
杉浦「まず、そうだなぁ〜…、大正編の楽曲の路線がモダンジャズに決まってからは一気にババッと書き上げ、完成したメロディを通して聴いてみると、『なんだこれ?歌えるじゃないか!』ということになり、急遽歌モノとしてダビングすることになりました。そのツーミックスをアップロードしてディレクターに聴いてもらったところ、『是非大正時代に流行った[流行歌]という設定で使いたい』という返信がありました。さらにスクリプトが加わり、なんとハインリヒが大正時代に存在したという設定に…これ言っちゃっていいのかな?…まぁおおよその流れはこうです。非常にライブ感覚で製作されたわけです。」

…製作された音楽によってシナリオが変化していくのは非常に興味深いエピソードですね。そんなライブ感のある大宮ディレクターはかなり音楽の知識に長けている方だとか。
杉浦「はい。打合せの時などメタリカの話で盛り上がったりしてました。その際、ダウンチューニングや7弦ギターなど、ウェポン(!)の使用許可が受諾され、場所により一部劇重(ゲキオモ)サウンドを作りました。今回スペクトラルジーンの時に比べ、ギターの比率が圧倒的に多く、最初レスポールだけでダビングしていたのですが、さすがにサウンドヴァリエーションを増やすため、後半、Ibanezのトレモロ搭載ギターを使用しました。まぁ単にアーミングプレイがやりたかったというのもありますけど…。あとディレクターに限らず、シナリオデザイナーの方達を含め、クリエイターの皆様は日頃から大変かっこいい音楽を聴いていますし、実に知識が豊富です。明確なビジョンを持っている。なので、全体を見渡すフォーカスとバランスが、音楽を作る上で大事な感覚と言えるかもしれません。最終的には感情にうったえるものだからです。」

―今回は寧ろ引き算…聞こえてくる場所を集中させるというやり方

…先程挿入歌のお話が出ましたが、他の歌モノ曲についても教えて下さい。
杉浦「実は主題歌以外の歌モノの曲は、構えて『歌モノを作ろう』という意気込みで作っていません。劇伴を作る工程で、さすがに30曲ぐらい書いていると、歌モノの曲が出来てしまうものなんです。しかもその工程で書いたほうが、その世界にピタッとはまる楽曲になるというメリットがあります。また、非常にナチュラルな工程で出てきた楽曲なので、miquiに対してもこれといった説明をしておらず、これもライブ感覚に、歌詞に関しては自由にやってもらっています。実際のダビング工程ですが、これもまたスペクトラルジーンの時とは180度違う感じです。ジーンの時は、ひたすら多重録音し、ものによってはボーカルトラックだけで20トラック使うこともありましたが、今回は寧ろ引き算の方法をとっています。可能な限り削り、聞こえてくる場所を集中させるというやり方です。というか、8トラック超えると、その後はいくらダビングをしても変化を聞き取りづらいものなんです。これは多分、人間の構造的な問題で、電話番号を超える数字を覚えられないのに似ているかもしれません。今回歌は4トラックを基準にダビングしました。なので、早い早い。殆どのボーカル楽曲があっという間に終わり、若干ミックスに余裕を持って、製作できました。リテイクもなかったですし(笑)。」

…歌モノは特にヴァラエティに富んでいる印象があったのは、劇伴の作業と共に楽曲が生まれていたからなんですね。特にエンディングテーマには度肝を抜かれました(笑)。今までのハインリヒの楽曲には無い感じですよね。
杉浦「うーん、そうかもしれませんね。このテイスト、感覚はおそらくゲームを最初から最後までプレイした人だけが楽しめる、本当の意味でのエンディングテーマです。なので、実はこの曲はゲーム本編スクリプトと、親密な関係にあります。是非クリアして、聴いてもらうのが最もこの楽曲の楽しい聴き方といえるかもしれません。」

…ちなみに前回音楽を担当した『スペクトラルジーン』はクリアされましたか?
杉浦「2周目まで…なかなか深いゲームです。」

…そんな方のために「SGOST」(スペクトラルジーンオリジナルサウンドトラック)のように今回もサントラCDの発売はありますか?(笑)
杉浦「現在検討中ですので、可能性は十分にあります。」

…それでは最後に一言お願いいたします。
杉浦「親知らずを抜いて、激しく痛いです。音楽的な感想は特にありません。無いからこそ、音で表現しています。」

…今回はトータルの印象としても杉浦師の得意とするロックテイストが十分に活かされて、スペクトラルジーンの時とはまた違った世界観を魅せてくれました。今後の活躍にも期待しています!

(了)

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