Talk w/z 珠子【4】

【4】2010年宇宙音の旅

青い花とハインリヒという、境界線があるようで無いと思うんですよ。筆が違うだけで。(sugiura)

珠子: 最近のハインリヒの楽曲って、私が聞いた勝手なイメージなんですけど、宇宙音がする!って思うんですね。
sugiura: 宇宙音!宇宙!
珠子: 宇宙。宇宙音。
sugiura: 宇宙~~~~~っ!
miqui: (sugiuraに向かって)なにそれ(笑)宇宙好きなの?
sugiura: 宇宙好き。
珠子: 私は宇宙音好きなので(笑)「あ!宇宙音がする!」とか思って。
miqui: え!?宇宙音って何ですか?
珠子: 宇宙を感じる音。宇宙音なんです(笑)
miqui: あはは(笑)
珠子: 勝手に言ってるんですけど(笑)私の中では、宇宙音っていうのがあって。なんか、それがよく…
sugiura: あってますよそれ。
miqui: あってます。二人目の対談ゲスト(eno)も宇宙行っちゃったって言ってたよね。
珠子: じゃあ、あってるんですね(笑)
miqui: 青い花はアジア行って、トルコらへん、インドらへん。今度のハインリヒは宇宙行っちゃったねって(笑)
珠子: 青い花のほうのアルバムの、アレンジが違うバージョンあるじゃないですか。あれも宇宙音しますよ、私には。
miqui: (青い花のアルバムの)一番最後に入ってる、ボーナストラックの。
珠子: そうそう。はい。
miqui: なるほどなるほど。宇宙音。新語!宇宙音。なるほどなぁ。
sugiura: そういう神秘的な感じだったり、うーん…なんだろう、人工的なマテリアルで作ってるアルバムなんですよ、あれ(NOW PRINTING)って。ほとんどがパソコンの中のソフトシンセサイザーであったり、そういうもので構築しているんだけども…なんていうのかな、サイエンスであったり、ネイチャーな感じですよね、よりナチュラルで自然のこととか、そういうことを実はイメージしているというか。
miqui: そうなんだ。
sugiura: そう。すごく音の世界はデジタルじゃないですか。でも、パッとどこかで大平原や青空があったりとか、景色が切り替わる瞬間というのかな。何かそういうのがあって。面白いなと思いますね。デジタルなもので、作ってはいるけれども、イメージすることそのものは、すごく自然のことであったりとか。
miqui: なんかね、例えばジャズって、生音で出来ているのに、人間が奏でているのに、なぜか竹やぶとか森の中でジャズを聴くというよりも、寧ろデジタル音のほうが合うという話をしている人がいて。青い花をやっている時に言われたの。逆にデジタルの音のほうが、自然とマッチングしやすかったりするのが不思議だよねっていう話をしていて。多分その宇宙音的なものなんだと思うんだけど。
珠子: そうかもしれないですね。
miqui: 生バンドの演奏よりも、アンビエントな、デジタルの音楽。不思議だよね~、っていう。
sugiura: その青い花とハインリヒという、境界線があるようで無いと思うんですよ。筆が違うだけで。根本は、変わるわけ無いんですよね。
sugiura・miqui: 同じ人間がやっているから(笑)
珠子: 今の筆が違うっていう表現、いいですね。あ!そうだな!って思います。
miqui: しかも、毎回筆が変わるし(笑)作る時期によって、ソフトが変わっていったりとか、自分達の思いも変わるし、毎回違っていきますよね。筆が変わる、絵の具が変わるに近いというか。

「感覚でしかないもの」に、チャレンジしたいなって(sugiura)

sugiura: 情景なんだろうね、NOW PRINTINGは。
miqui: 情景?
sugiura: 例えば、「恋愛して~がありました」というよりは、「星を見て何を感じるか」とか、情景とか光景的なものなんじゃないかな。
miqui: サントラっぽい。
sugiura: 好きな映画とかもそうなんですよ。押井守の、例えば攻殻機動隊だったり、パトレイバー2だったり、アバロンだったりするのも、なんかその光景とか、背景だったりするんですよね。うん。しかも何を感じるか、個々に違う。例えば、ジャッキーチェンの映画とか、ありえないじゃないですか。何か…最後絶対に勝たなきゃダメ!みたいなところもあるし。それを観る楽しさとは真逆なところにあると思うんだけども。そういう分かりやすさっていうのも大事かもしれないけど。今回もし自由なことをやれて、自由なチョイスができるんだとしたら、そういった「感覚でしかないもの」に、チャレンジしたいなっていう…もちろん、これがオファーがあれば、話は別だったりもするんだけど。
miqui: なっ(笑)
sugiura: 感覚というよりも、最近特に思うのが、気分が大事なんですね。どんな気分なのか、その曲が。で、面白いのが、自分でその曲を作ったのにも関わらず、自分でギター入れるじゃないですか。その曲の気分が、すごくクッキリするんですよ。クッキリするというか、「こういう曲だったのか!」ってそこで初めて分かるというのがあって。面白いなと思うんですよね。自分自身でも、見えていない角度があって、それがパッと見えるときに面白いなと。
珠子: うんうん!
sugiura: びっくりしたよね、昨日ね。
miqui: なんかレゲエの曲を作ってて…私はレゲエっていうのをまさかこの人が作ると思わなかったんですよ。で、私が先にベースを入れて、その後に彼がギターを入れて、それを昨夜聞いたら、あ、もう、全然、自分の思ってた印象と変わっていて。こうなったんだ!って。完全にsugiuraさんの作品になっていて。最初は「ん?」って思ったんですが、「ああ、sugiuraさん色に染まってるわ」って。
sugiura: それまで、明らかに浮いてる感じだったんだよね(笑)
miqui: 明らかに、他の楽曲に比べたら、なんか…のんきな感じというが、あのレゲエの独特のポワポワしてる感じだったんですけど。結構、ディープな世界にもってかれてた。
sugiura: 自分でもびっくりした。
珠子: へぇ。でも自分でもびっくりできるってすごいですね。
miqui: そういうのって、ないですか?例えば、目を入れた瞬間に…とか、わからないけど…
珠子: 作ってるときはないんですけど、写真を撮っているときに、思っていたよりも「あ!可愛いじゃん!」って思ったときはあります(笑)でも、それも一回ぐらい。
miqui: ええ!そうなんですか!途中で、なんか、例えば、焼きあがった瞬間とかに、「こうなったか!」みたいなのって…
珠子: ビスクは、まだその境地には達せていなくて…「ガンバロウ…」みたいな感じですね(笑)
miqui: そうですか~。そうか~。
sugiura: 前、ラキシス(漫画「Five Star Stories」の登場人物)の人形の写真を見せていただいたんですが、まさしく珠子さんなんだよね。内容が。
miqui: あれかわいい~♪
sugiura: 何を作っても、らしさが出る。
miqui: 音楽と一緒だよね。何をやっても、らしさが出る。…なんかね、*****(某TVアニメ)の、
sugiura: いいよ!そんな話!
miqui: エンディングテーマのコンペに、出したの。そのときも、やっぱりsugiuraさんっぽいんですよね。
珠子: そうですよね。自分では違う!と思っていても、人に言わせると、どこかしら…
miqui: その、ぽさ?ラインとかが
珠子: 根底にある何かが、変えられないというか。
miqui: そうそうそうそう、そうなんでしょうね。
sugiura: うちらで言えば、アレンジだけやるっていうことだよね。アレンジというか、誰かの曲を、自分らで演奏するというような。そういうものだからこそ、フェチがよく見えるというか。
miqui: あ、逆にね!逆にその人の色が、出やすいと言う事?
sugiura: うん。
miqui: そういうときに、なったときにどうなるかっていうことでしょ?例えば、みんなが同じものを作ったときに、「せーの!」で出した時に、「こう来たか!」みたいな。
珠子: ありますね。例えば、デッサンって、個性を出すものではなく、写実で描くわけじゃないですか。アカデミックなデッサンであれば。でも、その人のデッサンなんですよね。知っている人のなら、誰が描いたか分かります! こう、なんというか、タッチだったり、濃淡の付け方とか、その人独特なんですよね。特に本人は意識していないんだろうけど、やっぱりそう…
miqui: 出ちゃいますよね。全くそういうのを意識しないで作ったとしても、出るんだと思う。面白いなぁ。…あれ?何でこの話になったんだっけ?
sugiura: なんでだっけ?
miqui: あ、そうだ。私が途中で「あ、こうなったか!」っていう話からだ。
sugiura: 自分でもそう思うもん。

「いいじゃん!」って思える瞬間って、作品の中の煌めきを見つけた瞬間なんだと思うんですよ。(珠子)

珠子: それは素敵なことですね。それ、やっぱり才能があるからこそだと思うんですよ。何か光るものを持ち合わせずに生まれるもの(作品)も正直多いと思うんです、生み出されてはいても。それを自分がまず思えるってそれだけで素晴らしい。価値がある気がするんです。
miqui: うん。自分が、「いいな!」って思えるもの?
珠子: そうそう。何か、思っていた以上であったり、「いいじゃん!」って思える瞬間って、作品の中の煌めきを見つけた瞬間なんだと思うんですよ。それを自分のもので思えるっていうのは、作っている者として、
miqui: 冥利に尽きる。
珠子: そうそう、そんな感じで…
miqui: でも珠子さん、あるんじゃないんですか?こないだの作品だって、すごかったですよ。
珠子: ありがとうございます。
miqui: 思うでしょ?思わないですか?
珠子: (頭の中で)見せられているものに割と近づいたときは、「まぁ、なんとか近づけたかな」っていう達成感というか、使命を果たせた満足感みたいなものがあるんだけど、「なんかそれちゃったな…」って思うときもあるんです。出来る限り見せられたものに近づくように努力するので、出来上がっても、それ以上にはならないんですね。なので、そういう発見的な喜びはあまり…。ただ、別の作業に移った時、人形が完成してひとまず終わり、次、写真撮影ってなった時に、一度だけ良さを発見できた時があって、それはやっぱり嬉しかったですね。写真撮影の時って、今あるものから何とか良さを引き出そうと、また別の視点で見るので、もしかしたら、そういう時に発見しやすいのかも。
miqui: 私、分かった。珠子さんって、カメラに収めた瞬間が、完成なんですよね。
珠子: そうなんですかね?あ!でも言われたことあるかも。「写真作品なんですね」って。
miqui: 写真作品というか、空間…一番最初に言ったけど、人形本体というよりも、それプラス…もちろんそれが主役なんだけど、周りの、その世界観を全部まるっとパッケージした瞬間が、作品なんだよ。
珠子: そう。そうですね。シーンで浮かぶので、確かにそうなんだと思います!
miqui: そうなんだよ。
珠子: そっか、写真が近いのは、見せられている光景により近いからで、だからもしかしたら、そのモノを見せるというよりも、できるだけその光景に近づけて、展示をするとか写真をとるとか、そういうことなのかもしれない。
miqui: すごい。すごい!だから、ちょっと違う、レベルに、行ってるよね。「作って終わり」「自分の欲望を果たした」という感じではなくて、そこからまた先があるからさ。可能性がすごい、広い。広がりがすごい。
珠子: そんな、言っていただいて…ありがとうございます。
miqui: いえいえ…
珠子: あと、ちょっと思うのが、そういうの(頭の中で見せられている光景)があって人形を作るわけだけども、「すごい!」って思う人にお任せしてみたいな、という気持ちもすごくあるんですよ。例えば衣装だったりとか。それこそ、sugiura さんの言った「おお!こう来たか!」みたいな、あれを味わえるんじゃないかな?って!
miqui: 出会いですよね。
珠子: その人っていうのを、まだ見つけられていない。お会いしていないので、いつか!
miqui: 旅ですね。
珠子: そういう経験が出来たらいいなって。写真に関しては、以前堀江ケニーさんに撮っていただいて。写真も、誰が撮るかで全然違うので…。ただケニーさんは、縁があるのか、感覚が近いなと思う部分があるので、ヘンな違和感は全然なくて。すごい気持のいい、でもやっぱり自分とは違うっていう、ちょうど程いい…
miqui: いいエッセンスが。
珠子: うん。すごくいい経験をさせてもらって、嬉しかったです。感謝ですね。
miqui: ケニーさんも驚かされますね。写真、こないだも頂いたんですけど…その時、自分が撮られているのは覚えている。だけど、見ていないから、分からないじゃないですか。どうなったのかな~?って思って、久々に写真いただいたら、もう、自分の想像を絶してて。
珠子: あれって、どういう気持ちがするものです?こう、見たときに。撮られる側じゃないですか、お二人は。ステージでも、見られている側じゃないですか。写真だと、客観的に見られるわけじゃないですか。しかもそれっていうのはケニーさんの作品でもあるわけじゃないですか。そうなったときの気持ちって、どんなものなんでしょう。
miqui: どんな…なんとも言えないですよね。もちろんすっごい嬉しいんですよ。嬉しいし…不思議な感覚だよね。こうなったのかぁ。それこそさっきの「こうなったんだぁ!」っていうのに近い。驚き?と喜びの入り混じった…なんだろう。「自分じゃないみたい」とも思うし…
sugiura: そうだね、そっちの感覚に近いかな。
珠子: なんか、そういう感じがするのかな?って思って。なんか、それこそ「人のフィルターを通した、演出された自分」っていう感じになったときに、
miqui: そうですね。
珠子: それを味わえる面白さっていうのがあるのかな?と思って。
miqui: 毎回面白いなって思いますね。それに、ケニーさん自体が、面白いですよね(笑)すっごいフレンドリーだし、楽しいし。話すことも面白いですよね。こないだも、ヤバイ街に行って撮影をすると、そこに住んでいる人の念が入ってくるとか、そういう話をしたりしていたんですが…

【5】考えないで、作る。へ続く…


Talk List【全6回】
※掲載の写真はすべて、珠子氏によるものです。


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