Talk w/z 堀江ケニー【1】

【1】ケニーさんに学ぶ!日本ロック史~武道館20分から大根畑フェスまで~

(プライベートな会話がしばらく続き…)
kenny: ライブがっつりやってますよね?
sugiura: そうですね、基本「出てくれ」と言われるところには基本的に断らない姿勢でやっているというところなんですよ。
kenny: すごいですよね。
sugiura: 青い花でやってた頃とスタンスは変わりましたよね。基本的にデータの繰り返しだったというのがあるんですけど、今はライブにベースとかギターであったり、割と生の要素が足されてきたので、やってて楽しいっていうのがあるんですよね。
miqui: そうですね、今…11月で4本とか。
kenny: 次ってどこなんですか。
miqui: 次は…エイジア(club asia)ですね。
kenny: こないだ(のライブ)と似たような感じのイベントなんですか?
sugiura: いや、そうとも限らないですね。
miqui: 結構…節操なく…。逆にケニーさんのところはどんな感じだったりするんですか?
kenny: うち、今ほとんど下北から出ないですよ。
miqui: あ、こないだ(ライブで会った時)おっしゃっていましたよね。
kenny: 曼荼羅はちょっと縁があって、僕は人のバンドに出たんですよ。ブルースのバンドみたいなやつ…そっからちょっと縁があって。
miqui: …またね、「ブルース」とかだもん!だって。かっこいいですよね。
kenny: でもそのぐらいで。…会うこと無いですよね。ブルースやってる人って。会ったことないですもん。
miqui: (sugiuraに向かって)ある?
sugiura: うーん、高円寺のJIROKICHIとか行くと…JIROKICHIは黒人のギタープレイヤーが出てたりするんで。日本の解釈の「ブルース」というのとは違うんですけどね。もっとブラックよりな感じの。
kenny: なるほどね。…下北とかは全然いないですよ。
miqui: やっぱりグランジロックなイメージが…
kenny: そうそう、まさしく。あと、ちょっとレゲエの匂いのする…裏打ちの人達とか。
miqui: あ!じゃあ(ケニーさんのバンドと)合いますよね。やっぱり。
kenny: でもそれでもちょっと浮くかな。今裏打ちないし。
miqui: あれ?レゲエのイメージが私はすごい…
kenny: いや全然今変わりましたね。

当時のブリティッシュロックを知っている人しか弾けないギターなんだよな。(sugiura)

miqui: あ、私ね、今日聞こうと思っていたんですけど、なんでバンド名(「LOVE LIFE LIVE」から「冥途之土産バンド」に)変わったんですか?
kenny: バンド名は、なんとなく、あのー…なんか、自分の誕生日の時にいっぱい人が集まって、なんか「冥途之土産」ってバンドになったんですよね。
miqui: え!?ちょ、ちょっと待ってくださいよ!え?!(笑)
sugiura: あ、じゃあ「ケニーさんありき」だ。じゃあ。
miqui: バンドマスター?
sugiura: バンドマスター!
kenny: じゃないんですけど(笑)
miqui: あ、ボーカルの方?
kenny: そうです、彼女がメインで動いているバンドで…
miqui: うんうん。
sugiura: なるほどー。
miqui: …ちょ、ちょっと待って、それで冥途之土産っていう名前って…だからね、なんかあったのかな?って。例えばメンバーがごっそり変わるとか、そんな感じも…?
kenny: 全然全然。そんなんじゃなくて。
miqui: あぁ、そうなんですかぁ。
kenny: そうそう。「冥途之土産バンド」って、「冥途の土産になって、かっこよくね?」みたいな。そんな話で。
miqui: まぁ…なんか思うところがあったのかな?と思って。
kenny: なんとなく、ゲゲゲな感じが。
miqui: ゲゲゲな感じが。(笑)
sugiura: でも(バンドの)カラーは明るいですよね。
miqui: 明るいですよね。本当に、なんか、LOVE&PEACE的な。でも!違うんですか?実は。
kenny: そんなんでもないんですよね。
miqui: !なんかそんな感じがする。LOVE&PEACEでゴーン!といった感じではなくて、ちょっと…違う…
kenny: 昭和な感じだと思う。
miqui: ああ~。
kenny: ちょっと昭和。
miqui: そうなんですか。
sugiura: 東中野(落合soup)でやったとき観に行ったじゃないですか。あの時やっぱり思ったのが、そういう昭和とか、ブルースとかレゲエとか、そういう枠ではないですよね。
kenny: あ、それよく言われる。
sugiura: そういうカテゴリーがない感じがする。いい意味なんですけど、そういうリミッターがないのかなという感じがして。
kenny: そうそう、ジャンルがないって。それは言われます。
sugiura: それがすごい、よかったなぁって思って。
miqui: ガチガチしていないというか、柔らかい、液体っぽいというか、流動的というか、
sugiura: 「やりたいことをやってるぜ!」というのがね。
miqui: すごくそれが気持ちいいですよね。見ているほうからしても。やっぱりなんかそういうスタイルが…
kenny: なんか、まさに好きなことやってたらそうなっちゃった、みたいな。
sugiura: なんだろうな。ようするにケニーさんみたいに、もろに、当時のブリティッシュロックを知っている人しか弾けないギターなんだよな。なんか…それがやっぱりすごいなと。
kenny: 古いって言われます。確かに。
sugiura: それはすごいいい意味ですよ。今出来るやつがいないっていう。
miqui: そうですよ。
sugiura: ギターって時代ごとに解釈が違う楽器じゃないですか。僕なんか70年代のツェッペリンであったりとか、プログレであったりとか、好きなんですけど、それ「やれ」って言ってもやっぱりできないですからね。
miqui: やっぱり知っていないと出来ないというのはありますよね。
sugiura: あるある。知ってないと出来ないし、そこにジャストにいないとダメなんですよね、きっと。
miqui: 肌で感じてた世代。

今となんか全然時代が違って、なんていうのかな…「熱い」。熱い時代だったんですね。(kenny)

kenny: sugiuraくんの時代のメインのバンドって、どんなんだったんですか?
sugiura: うーん、日本だとボウイとかがいましたし、ラフィンノーズであったり、ライブハウスでやってる連中はみんなそんな感じだったし…あとはメタルですよね。ラウドネスを聴いていたりとか。
kenny: 海外の人たちは?
sugiura: 僕が好きだったのは、やっぱりエアロスミスとか、
kenny: あの人達、息長いですからね。ほんとに。
sugiura: しかも現役だっていう。そこからツェッペリンにいったり、いろいろしていったという感じなんですね。
miqui: ルーツを辿っていったら?
sugiura: そうそう。
kenny: なるほど。カートコバーンとかあの辺もそうだったんですか?
sugiura: いや、結構…ちょっと違いますね。カートコバーンになってくると、miquiの時代なんじゃないのかな。
miqui: まぁ、そうなんでしょうね。あんまりどっぷり浸かってはないですけど…多分うちの世代、とかいうと歳がバレるけど…(笑) グランジね~。
sugiura: 僕はグランジは聞かなかったですね。
kenny: メタルとか聴いてたんですか。
sugiura: どっちかというとそうですね。メタル…ですね。
miqui: そうなんだ。
sugiura: その、大きく分かれるんですよ、中高生の頃に。メタルに行くやつと、パンクに行くやつで。
miqui: あぁ、パンクか!
sugiura: でも(僕は)普通にポップなバンドやってましたけどね。
kenny: なるほど。
miqui: ケニーさんっていつからギターをやってらっしゃるんですか?
kenny: 僕は全然、ギターってほとんど触ったり触らなかったりで。ブランクがずーっとあって。このバンド始めるくらいから初めてギター触ったぐらいで。
miqui: えっ!?
kenny: あとはもうブランク。全然触ってなかったんですよ。
miqui: やっぱりでも、高校生くらいの時に…
kenny: でもほんとにちょっと。それからもう置いちゃって。別にバンドやってるわけでもないし、全く。
miqui: 音楽とかは、結構聴いてたんですか?
kenny: いや、そんなでもないですね…高校生の時は…一番聴いてた時は聴いてたけど、それから先って「好きでいつも聴いてる」とか、そういうのは別に…
miqui: そうなんですか。何かがあったのか?(独り言)じゃあ何かきっかけが…あったんですか?
kenny: あぁ、まぁ「バンドやろうぜ」みたいな。
miqui: あぁ、ノリで。
kenny: そう、ノリで。
miqui: ボーカルの方の。
kenny: 「誰かいねぇのかな?」みたいな感じで(メンバー)集めてて。で、ほんとに何十年ぶりにギター触りましたよ。ギター触るの、とかいって、「前やってたか?」みたいな。
miqui: (笑)ああ、そうなんですか。てっきり、すごい上手だから…
kenny: そう、だからこのバンド始めた時が、ほぼギター始めたのと同じ。
miqui: 意外!結構、趣味でやっていらしたのかな?と、思ってました。ね?
kenny: 全然全然。全く。ほぼ。触ってないです。(笑)
miqui: そうなんだ(笑)
kenny: 確かに、ヅェッペリンの時代とかそういう時代は観に行ってたけど、別に観にいってたからって、(ギター)弾いてたわけではなく、
miqui: 「流行」みたいな感じだったんですか?
kenny: そうそう、まさしく。
miqui: そうなんだ!
kenny: 流行、流行。
miqui: へぇ~。

機動隊来ましたからね。普通に。(kenny)

kenny: 今となんか全然時代が違って、なんていうのかな…「熱い」。熱い時代だったんですね。
miqui: 音楽の、シーンが?
kenny: 音楽も、全体的に。音楽と政治の…ああいうのがくっついてる感じで。
sugiura: 日米安保(安保闘争)とかですよね。

安保闘争:
1959年~1960年(昭和34~35年)と、1970年(昭和45年)の2度起きた、日本史上空前の大規模政治闘争。日米安全保障条約に反対する労働者、学生および市民が参加した、反政府、反米運動によるもの。火炎瓶や鉄パイプで暴力を振るう暴動・紛争などが起きた。

kenny: そうそう、そういうのがくっついてて。なんか、若いやつの全部が「くっついてる」感じで。だから危険な匂いが絶えず。オレなんかまだその頃、子供だったから、上の人に(ライブ)連れられて行くような感じで…ちょっと怖い。普通に怖い。なんか…「お!コワ!」みたいな。
miqui: (笑)じゃあ、今(の若者の雰囲気)みたいな柔らかい感じではない。街自体が?
kenny: 全然。あのね、一触即発な感じが絶えずあったと思う。例えば、オレ覚えてるのが、ディープパープルの武道館。二回目の来日だった時に、オレがまだ若かったから、大学生の人に連れられて行ったんだけど、前年来た時と全く同じ曲順で、同じ曲やって、アンコールやらなかったんですよね。そしたら、暴動になりましたからね。

ディープパープル:
Deep Purpleは1968年にイギリスで結成されたハードロックバンド。爆音サウンドで、ハード・ロック、ヘヴィ・メタルの礎を作った。1973年度版ギネスブックに『世界一の大音響バンド』として認定されている。10回以上のメンバーチェンジを行いながら、今現在も現役として活動を続けている。

miqui: !(笑)
kenny: 機動隊来ましたからね。普通に。
sugiura: miqui: !(笑)
kenny: そう!トイレとか壊されて水バーバー吹いちゃってるし、ちょっと…「死んじゃうか?」って思うくらいに。
miqui: (笑)なるほどなぁ~。そっかぁ。そうなんだぁ。すごいなぁ。
kenny: すごかったっす。
sugiura: しかし二回同じセットリストっていうのは凄いですね。
kenny: やる気なかったんでしょうね。多分、ダメになっていくときだったんだと思うんです。バンド自体が。誰かが抜けて。
sugiura: イアンギランの頃ですか?
kenny: です。多分それが最後で。リッチーがもう辞めるって言って。仲悪かったんだと思うんです、二人。完全に。最悪な状態で。「日本来ちゃったはいいけどやる気全くない」みたいな感じで。
sugiura: とりあえず…
kenny: 「やるっきゃねぇよ」みたいな感じで。凄かったですよ。
miqui: へぇ。
kenny: あと、なんかね。今で言うフェスなんですかね。当時はフェスなんて言ってなくて、朝霧高原で、日本のバンドとか色んなのが来て、ピンクフロイドも来たんですよね。
sugiura: へぇ!

ピンクフロイド: Pink Floydは、イギリス出身のプログレッシブ(プログレ)・ロック・バンド。幻想的なサウンド、実験的な音楽性と芸術的なアプローチ、哲学的な歌詞で世界を魅了した。商業的にも成功し、70年代に最も成功したロックバンドと言われている。初期はサイケデリックサウンドだったが、後にプログレの大御所と呼ばれるようになる。現在のエレクトロニカシーンにも大きく影響を与えたバンド。

kenny: その時のがすごい印象に残ってて。…本当の霧が出てて、ライトとかで照らしててピンクの霧とかになってて。で、どこでピンクフロイドが弾いてるのかわからないんですよ。霧で。
miqui: すーごい!
kenny: それが大根の畑みたいなところで、大根とかあって。なんか。
miqui: !(笑)
kenny: 今考えると「どーなの!?」っていうぐらいの。トラックの上とかで演奏してるんですよ。そのー、4トン車のトラックの荷台とかで。
miqui: (爆笑)
sugiura: へぇ~
kenny: なんか…
miqui: なんかヒッピーっぽいですよね。
kenny: あ、もうモロ。
miqui: でしょ!
kenny: モロモロ。完全にヒッピー。
miqui: サイケデリックですよね。ピンクの霧とか。
kenny: 日本のバンドは、鈴木ヒロミツがいた…なんか忘れちゃったけど、グループサウンズの成れの果てみたいなバンドが出てたりとか、つのだ☆ひろの、訳の分からないバンドが出ていたりとか。
sugiura: あれ、すごいんですよね。確か。
kenny: (笑)
sugiura: 確か、なんか、すごいんですよね。聴いたんだけど、オレ。バンド名忘れちゃったけど。
kenny: こんなような、アースウィンド&ファイアーみたいなの着て、訳のわからない…すごいアレでしたね。

モンキーズ、武道館だったんですよ。しかも武道館で、20分とかで終わりなんですよ。(kenny)

miqui: 面白いですね、そのフェスは。
kenny: フェスって言ってなかったですけどね。そんな名前は無く…
miqui: 朝霧フェスじゃないんですか?
kenny: そんなんじゃなくて、朝霧って言っても、あんな、おしゃれでもなんでもなく、ほんとにトラックの荷台みたいな、なんか。
miqui: 大根がその辺にあったって(笑)
kenny: 大根の畑みたいなところで。
miqui: (爆笑)シュールですね。
kenny: めっちゃシュールでしたよ。
sugiura: つまり、ウッドストック的なことをやりたかったんですよね。
kenny: やりたかったんでしょうね。当時の人は。多分。当時の若者は。絶対。
miqui: うん(笑)
kenny: オレ一番最初に行ったコンサートが、忘れもしない…となりんちの姉ちゃんかなんかに連れられて、「ザ・モンキーズ」でしたから。
sugiura: あぁ。
miqui: わかる?
sugiura: わかりますよ。

ザ・モンキーズ: The Monkeesは、アメリカのロックバンド。ビートルズをビジネスモデルにし、メディアミックス展開を軸においた、当時では珍しいテレビ企画モノバンド。日本では80年代に起きた60年代リバイバルブームにより、CMに使用された楽曲「デイドリーム・ビリーヴァー」でモンキーズ・ブームが起こった。

kenny: モンキーズ、武道館だったんですよ。しかも武道館で、20分とかで終わりなんですよ。超短いんですよ。
miqui: なんでですか!?
sugiura: まさに、ビートルズ状態ですね。
kenny: そうそう。それが普通だったんですよ。多分。覚えていないけど。で、なんか今聴くと、モンキーズって楽器弾けなかったから、別のバンドが後ろでダミーで弾いてたっていう。
sugiura: あぁ、そうなんだ。
kenny: なんか、クチパク。
miqui: えぇぇ~!
kenny: そんなんだったみたいで。
miqui: すごい!
kenny: すごい時代でしょ。
miqui: アテ振り?
kenny: 音とかもなんかちっちゃくて。
sugiura: まぁ(そこに)いるっていうことが重要なわけですよね。
kenny: やってることも、もう「キャーキャー」っていう声で聞こえないくらいで。
miqui: で、20分で終わり。
kenny: 20分で、終わり。そうそう。そういうのを全て覆したのがヅェッペリンが来た時ですよね。2時間半とか3時間半とか位普通にやっちゃって。
miqui: へぇ!
kenny: で、これ、いつ終わるの?みたいな。
miqui: トイレ行きたいんだけど、みたいな。(笑)
kenny: 電車無くなるし、みたいな。(笑)
sugiura: 途中でソロのコーナーをはさむんですよね。
miqui: え?「ボンゾ(ジョン・ボーナム)の太鼓のコーナー!」みたいな?
sugiura: もちろんそれもあるし、微妙にそれで一人一人休んでいくという…
kenny: そうそう、それぞれスポットが当たるような。…なんか、多分、ディープパープルの人とヅェッペリンの人で別れていたような時代だった気がしますね。
miqui: 派閥が。
kenny: ヅェッペリンって、基本、音がスッカスカなんですよね。ディープパープルって詰まってる感じが。オルガン入っていたりして。
sugiura: ツェッペリンはあの空気感っていうのかな。最大の売りなんでしょうね。
miqui: あとジミーペイジのキャラも濃いし。
kenny: だと思う。
sugiura: ジミーペイジとロバートプラントが来た時に観にいったんですけど、一番最初にやった曲が移民の歌だったんですよ。そこで、当時みんな好きだった人達だったんでしょうね。何やってるか聞こえないくらいな感じで、もう、半狂乱。
kenny: わかる気がする。そうなんですよね。
miqui: 最近誰か行きました?ライブ。

【2】NOW PRITINGコンセプトアルバム論へ続く…


Talk List【全7回】
※掲載の写真はすべて、堀江ケニー氏によるものです。


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