Talk w/z 堀江ケニー【3】

【3】上手下手では計れない何か

「足元何?」(笑)(miqui)

kenny: あの、バンド形態では何回くらいやったんですか?ライブ。ドラムがいて、ベースがいてっていうのは…
miqui: 何回ぐらいだろう?10回やってないのかな…?ぐらいですかね?そんなにやってないですね。
sugiura: そうですね、あれをやり始めてすぐもう今度サントラ制作が始まっちゃったんで…その期間は割と他のことできるほど余裕は無かったっていうのが…
miqui: 生バンドは、大変ですよね。
kenny: 大変ですよね。大変。じゃあ、あの時は週一回とかでリハ入ったりしたんですか?
sugiura: ライブの前に集中的にやるって感じですね。
kenny: なるほど。
miqui: うちの場合、同期があるので…
sugiura: シーケンサーね。
miqui: そうそう、ドラムがドンカマ聴きながら叩くので、それが大変なんですよね。

ドンカマ:
ガイドリズムのこと。リズムをキープするために、ライブでは主にドラマーなどが耳にイヤホンを入れ、これを聞きながらドラムを叩く。現在ではガイドリズム一般を指す用語として定着したが、本当は、京王技術研究所(現コルグ)が1963年に発売した、国産初のリズムボックスの名称(ドンカマチック(DONCA MATIC))を略したものである。

kenny: 大変ですよね。めっちゃ大変ですよね。あれ、慣れないと多分、絶対できないですよ。
miqui: なかなかできないですよね。うん。うちもあんまりリハに入らないので、元々(笑)ケニーさんのところってリハどのくらい入ってます?
kenny: リハはでも、その時々によりますけどね。週1だったり、入れないときは入れないし、そうするとライブのその日にライブリハ終った後にスタジオ入って、だいたいそうなっちゃいますよね。
sugiura: へぇ。
kenny: そのライブの日に、近所のどっかスタジオ行って、一時間とか二時間くらいやって、それでライブやるっていうパターンが、ほぼ。今はそんな感じです。
miqui: そうなんですか!
sugiura: すごいな。
miqui: すごいね。うちもそうしようよ(笑)
kenny: ライブの日はみんな集まるじゃないですか、だって。
miqui: 経済的ですよね、その日にやるほうが(笑)
kenny: 集まれる時と集まれない時がやっぱりあって。「オレ仕事だ」とか絶対あるから。なかなかね。だからそのライブの日には絶対やってますね。ライブリハ終った後に。…で、オレはいつまでたってもリハが慣れなくて。
miqui: え?なんでですか?
kenny: イヤなんですよ。なんか、リハやるのって。こう、他のバンドとかみんな見てる中でリハやるの、苦手なんですよ。
miqui: その日の(ライブの)リハね!
kenny: そうそうそう、ライブハウスでのリハ。が、なんかね、イヤ。イヤなんですよ。未だにオレは慣れない。
miqui: いやぁっはっ(笑)
kenny: ライブ自体はいいんですよ。客がいてっていうのはいいんだけど。
miqui: それなんか興味深い話だなぁ!
kenny: 他のバンドとか、ガン見してるときとかあるじゃないですか。
sugiura: はいはいはい。
miqui: ありますよね。
kenny: だめなんですよね。苦手。
sugiura: ハッハッハッ(笑)

あるんだと思う。そういうところに、人を動かしちゃう(力)というのが。(sugiura)

kenny: 一番やだ!オレ。別に客いるときは全然どうってことないんだけど、他のバンドがいる中で、なんかね、ガン見されてるのがなんかね、未だに慣れない。
miqui: え?なんで?そんなの全然!ケニーさんだったら「どうだよ!」「どうだい!」って!「どや!どや!」みたいな感じで!
kenny: だめっすね。非常に変な感じ。すごい…やだ!
miqui: (笑)
kenny: ものすごい吟味されてるみたいな感じがするんですよ、なんか。
sugiura: miqui: あー
kenny: すごいね、気になる。
miqui: 同業だしね。同業者に見られるのがちょっと…
kenny: そう!気になる!ものすごく。
miqui: (笑)らしくない!そんな感じしない!ケニーさんって。
sugiura: いや、なんか、でも、かわいいよね。(笑)
miqui: (笑)
kenny: だめっすね!いつまでたっても。慣れない。
miqui: そうなんだぁ。
sugiura: シャイなんですね。
kenny: そうそうそう、シャイなんです。
miqui: でも本番は全然緊張してない感じしますよね。
kenny: 本番は全然別に、別に。「いいや!」みたいな感じになってるんだけど。本番って、お客さん普通に見てるだけじゃないですか。
miqui: ええ。
kenny: バンドの人ってなんか「機材何?」とか見るじゃないですか!「足元何?」とか。
miqui: 「足元何?」(笑)
kenny: 「やめてくれよぉ、勘弁してくれよぉ!」みたいな。
miqui: 本番に覗きに来る人いません?本番中に。足元

足元:
ギタリストやベーシストの足元にはエフェクターが並んでいる。足元を見に来るのは「どんなエフェクターを使ってこの音を出してるんだろう?」という興味から。よって、いい音、興味深い音を出している時に、見られるのである。

kenny: いるいる。どんだけ好きなんだろう?って。オタクだなぁ~とか思いつつ。
sugiura: でも…気になりますよね。アーティストって。何使ってるのかな?って。
kenny: 確かに気にならなくは、ないですけど…
sugiura: 東中野で(ケニーさんのライブ)見たときに、ケニーさんがLINE6でタップやってたじゃないですか。
kenny: はいはい。

タップ:
エフェクターについているフットスイッチ。BPM(曲のテンポ)に合わせディレイの長さなどを設定する装置のこと。

sugiura: あれを見て、タップでディレイを変えていくの、すごい面白いなぁって思って。実はそれをフィードバックさせて、今やってるんですよ。
kenny: はいはい。
miqui: 今LINE6使ってるよね。
sugiura: 結構、そういう影響受けていたり。
miqui: じゃあモロに喰らってるじゃないですか!(笑)
sugiura: 面白いなぁと思って。やっぱね、ケニーさんが楽しそうに楽器を触るところにあるんだと思う。そういうところに、人を動かしちゃう(力)というのが。

楽器って、人柄が出ると思います。そのまんま、その人が。(kenny)

miqui: 絶対そうだと思う。曲とかはどういう感じで作るんですか?
kenny: 曲は、ジャムセッションから、出てくる。
miqui: すっごい健康的!素晴らしい。

ジャムセッション:
ミュージシャンが集まって即興的に演奏することをいう。ここでは、リハーサルスタジオなどでバンドが集まり、その場で適当に演奏しながら、曲や曲の一部を作っていくこと。

kenny: でもある程度までいって、止まっちゃうんですよね。「なんかおかしくねぇ?」なんて、誰かが言い出して、
miqui: 全曲そういう感じですか?
kenny: 大体。
miqui: だからかな?気持ちいいのは。すごく、聴いてて気持ちいいなって思いますよね。毎回。
kenny: (曲作りが)止まることもありますよね。停滞して。できない。さくさく行かないとか。そうするとなんか、スタジオの中がいやぁ~な空気が。どよ~んみたいな。
miqui: (笑)でもまたその時間が楽しいんじゃないんですか?そうでもない?(笑)
kenny: うーんなんか、…人多いとめんどくさいですよ!やっぱり。なんにもやってない人間と、やってる人間と。なんもやってない人間はただただ待つ、みたいな。「早く決めてくれよ」「どっちでもいいんじゃね?」みたいなやつと、
miqui: 「どっちでもいいんじゃね?」(笑)
sugiura: そもそもバンドが伝えることっていうのが、感情の起伏じゃないですか。気分の高揚であったりとか。だからモロにそういう影響がありますよね。気持ち出ますよね。
kenny: あると思いますよ。出ると思う。
sugiura: いい日もあれば。
kenny: まさしくその通りで、全くその通りですよ。
miqui: 人間っぽい。
kenny: いい日もあれば、確かにすべったときとかも、
sugiura: うまくいかない日もありますよね。
kenny: 絶対ある。ありますあります。なんか、楽器って、人柄が出ると思います。そのまんま、その人が。まんま出る、あれ。絶対。
miqui: 出ますね。まんま出る(笑)
kenny: 出る。なんか。人柄が。上手いとか下手とかも絶対あるんだけど、そこじゃないところ。
miqui: ありますよね。(笑)
kenny: 絶対あって。うまけりゃいいわけじゃなくて。うまくてもつまんないやつはつまんないじゃないですか。
miqui: つまんないです。ボーカルなんて特にそうなんですよ。うまいだけでは、ほんとつまんないって。
kenny: なんかね、「ボーカルスクール行ったんだな!」って。完全に、訓練された兵隊みたいな歌い方する人達って。みんな、判で押したような感じの。
miqui: く、訓練された兵隊!(笑)確かに確かに。
kenny: だからってそれが面白いわけでもなく、ヘタでもなんかね、「おもしれぇ!」って思うやつって違うんですよね。
sugiura: 僕も同じこと思いますね。
miqui: そう。私もボーカルスクール行ってたんですけど、そこの先生が、「これ以上やると、もう、ツルンとしちゃう。キレイになっちゃうから、もう、来なくていいよ!」って言われて(笑)そのなんか、クセみたいなのをあえて残したほうがいいとかって。そういうのがあるんだなぁって思って。

ここですよね。こういうの。(胸の前で腕をぐるぐるして、何かが胸から出ていくようなジェスチャ)(miqui)

sugiura: 逆に、鍛錬することで、その「気分」みたいなものが見えなくなってしまうということがあるかもしれないですね。
kenny: なんか、熱さが伝わってこない人もいるし、腕自慢みたいな人とか引いちゃいますよ。自分ちでやったらいいじゃん、腕自慢みたいなテク自慢みたいな人とか。そういうの好きな人もいるとは思うんだけど、オレはなんかこう「別にそういうのやられてもなぁ…」みたいな。「歌モノなのに、歌立てないでどうすんだよ!」みたいな。
sugiura: そうですよね。そういう風にギター弾く人もいますよね。
kenny: 何を伝えたいのかがよく分からない。「何やりたいのかな?」って思っちゃう人とか。
miqui: あ、対バンとかで、います?
kenny: いるいる。全然つまんない人、全然いる。はっきり言って。
miqui: (笑)
kenny: 全然動かない。何にも。
miqui: ここですよね。こういうの。(胸の前で腕をぐるぐるして、何かが胸から出ていくようなジェスチャ)
kenny: そうそう。ジャンルなんてもうどうでもよくて。
miqui: わかります!ジャンルじゃないですよね。
kenny: ジャンルなんかどうでもいいんですよ、もう。
miqui: よくジャンルで、「これは聴かない」とか「これは聴く」とかって言う人、いるじゃないですか。
kenny: いますね。
miqui: あと、やたら「これはテクノなんだ!」「これはロックだよ!」って気にする人、いるじゃないですか。意味が分からないですよね。
kenny: いるいる。そうそう。
miqui: 自分でそうやって制限して、何が面白いのかな?って思っちゃう。
kenny: 特に日本人は居がちだと思う。そういう人。大好き、ジャンル分けするのが。
miqui: なんでですかね。あれね。
kenny: すごい多いですよね。分かりやすいから。今の世代の人ってそうなりますよね。
miqui: 私なんかすごい、雑食なんですよ。
kenny: オレもそうです。全然。
miqui: レゲエも聴くし、なんでも聴くから…
kenny: いいものはいいんですよ。別に関係ないんだけど。そのとおりなんですよ。ジャンル分けしますよね、普通に。
miqui: そう、だから「そのジャンルのアーティストだったら聴くけど」みたいな。こっちは一切聴かない!とか。あれがなんでかな?って思っちゃう。
sugiura: カテゴリーそのものがもう、飽和してるじゃないですか。
kenny: してます。
sugiura: それが何を意味してるのか、っていったら、もう既に(ジャンルの)境界線が曖昧だし、無いっていうことですよね。おそらく、無いんですよ。そんなものは最初から、こう言っちゃ悪いかもしれないけど、商業的な戦略でしかなくて、
kenny: ですよね。
miqui: 売りやすい、からだよね。
sugiura: 売り手の都合なんだと思う。
miqui: だってうちなんか、ジャンル、つけられないって言われたもん。
kenny: うん!そう思う。
miqui: (笑)青い花のときなんか、散々だったよね。「ジャンルはなんなんですか?」ってすごい言われて。「なんだろう?」って思って。その時、「エスノなんとか」っていうのが流行ってたみたいで「じゃあそれで」みたいな。やってるほうがわからないし。あんまり気にしてないし。(笑)
kenny: やっぱオレ、バンドに大切なのって、Voodoo感だと思うんですよ。
miqui: Voodoo感?!Voodooってなんですか?!

【4】Voodoo感とイマジネーション へ続く…


Talk List【全7回】
※掲載の写真はすべて、堀江ケニー氏によるものです。


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