Talk w/z 堀江ケニー【2】

【2】NOW PRITINGコンセプトアルバム論

日本のアフガニスタンみたいなところで。(kenny)

miqui: 最近誰か行きました?ライブ。
kenny: もう全然行かないですよ。もう全く行かないです。
miqui: 大きいのも…
kenny: 全く行かないです。興味なくなっちゃって。
miqui: 普段はどういう…最近聴く曲はどういう感じの…
kenny: 誰聴いてるかなぁ。クレイジーケンバンド?
miqui: あぁ!じもてぃ(同じ地元の人の意)。いいですよね。
kenny: うん。あとね、全然ジャンル違うんだけど、ラップの人でSHINGO★西成というのがいるんですけど。それが物凄くかっこよくていいですよ。
miqui: へぇ。
kenny: 西成ってすごい、ゲットーじゃないですか。日本最大級のGhetto。
miqui: ゲットー?
kenny: Ghetto。スラム。
miqui: スラム!
kenny: 関西にある、西成って、2008年に暴動がおきて、日本のアフガニスタンみたいなところで。
miqui: え、そんなところがあるんですか?
kenny: もう半端ないですよ、西成は。西成、東京の山谷、あと横浜の寿(町)。日本の三大ゲットーです。でもその中でも西成は、別格。もうすごい。写真撮りたくて西成行ったんですけど、ちょっと、凄い。もう、日本じゃない。
miqui: えぇっ!どんなん…
kenny: あのね、まずカメラ出すのが、もう結構勇気いる。
miqui: えっ、えっ!?どんな街なんですか?寿とはまたちょっと違う?
kenny: あれのもっとハードコア版。
miqui: ええぇ!?(笑)

―ケニーさん、西成を語る(内容が凄すぎるので割愛します)

miqui: へぇ…
kenny: あの一体はハードコアっすよ。
miqui: じゃあ撮影に、
kenny: 前、一回行ったんですけどね。
miqui: ちょっとカメラ出せなかった…?
kenny: あれはね…撮ったは撮ったんですけどね。結構…凄いですよね。その、何日間とかじゃ伝えきれないですよね。リアリティが撮れない。なんとなくな感じしか撮れない。
miqui: しばらく滞在しないと?
kenny: 撮れない。知り合いのカメラマンがそれを、横浜の寿で撮ったりしてたんだけど、やっぱ大変みたいです。色んな意味で大変みたい。
miqui: え?寿、も?
kenny: 寿も。なんかそういう人達の、アレが残っちゃうみたい。仲良くなっちゃうと…
miqui: 念みたいのが。
kenny: そう、残っちゃって。なんかね、撮れなくなってくるって言ってました。自分もなんかやばい感じになってきちゃって。
miqui: そういうことがあるわけだ。
kenny: そうそう、だから日本的のアレとしては、SHINGOっていう人はほんと、ゲットーのラッパーな感じがして。
miqui: じゃあ結構ハードコアな内容…
kenny: 内容はもう西成の歌を歌ってますね。普通に。オレは生まれたときから西成で、みたいな。
miqui: 日常と密接した…
kenny: 西成の毎日、みたいなのを歌ってて。なんかね、ちょっと面白い。そういうの聴いたりしてますね。あんまりブルースみたいのも聴かないし、プログレみたいのも最近は全然…聴かないかな。
miqui: そうですか。もともと…好きでした?
kenny: プログレはね、ピンクフロイドくらいですよ。あと、知り合いの人がやってた、「Far East Family Band」っていうのがあって、当時の日本のプログレのハシリみたいな人達。
miqui: へぇ。

物凄く、シャーマンチックな感じが、オレは、しました。(kenny)

kenny: 今もその人、天河神社って奈良にあって、すごいパワースポットらしいんですけど、神秘的なマークの神社なんですけど、UFO目撃談とかやたら多い…そこに行くとなんか、「ピキーン!」としてて、スピリチュアルなところらしいんですけど、そこで毎年、音楽、キーボード奉納して、やってますよ。
sugiura: なんか知ってる、それ。
kenny: ブライアンイーノとかも来て、やってますよ。
miqui: へぇ~
kenny: 能の舞いとかやるところで。ほんとになんかこう…神秘的なんですよ。場所が。これ本当になんかあるんじゃないかな?って。行くと思ってしまうような神社で。そこでそんな音楽聴いたらなんかその気になるよなぁ、みたいな。
miqui: (笑)その気!(笑)
kenny: そうなんですよ…で、あのアルバム聴いたら、ハインリヒの(NOW PRINTING)、あれもなんかね、スピリチュアルな感じがしたんですよね。書いてる内容とか…詞?ものすごいこう、スピリチュアルな感じが、しましたね。
miqui: そうですか?!
kenny: ちょっとこう…悪い意味じゃなくて…宗教チックな感じの…
miqui: いやはぁ~!(笑)ちょっと待って!(笑)
kenny: 悪い意味じゃなくて…物凄くね、オレ、スピリチュアルな感じしたんですよ。この…
miqui: そうですか!?
kenny: 自然と人間のなんかこう…
sugiura: でも、おそらく、ドンズバの意見だと思うんですよ、それは。
kenny: 物凄く思いましたよ。あれ。
sugiura: 実はその、デジタルというコンテンツを使っているけども、なんていうのかな…チベットの少年だったりとか、何かそういう…世界的な問題っていうのかな?そういったことを感じてもらえたらなっていう感じで作ったんで…
kenny: 感じました。自然と人間の…なんか…そういうの、感じましたね。
miqui: 感じましたか。
sugiura: じゃあもう完璧にキャッチしてるっていう感じですよ。
kenny: すごいスピリチュアルな感じ。
miqui: そうですか!
kenny: 音楽は内容はまさにデジタルなんだけど、そこが問題じゃなくて。
miqui: 歌詞は初めて言われましたね。今回の対談で。
kenny: 完全でしょ。星との…あのDOMEっていうやつは、オレすごく…特にそういう感じはしましたね。
miqui: あれは、モチーフはsugiuraの提案なんですよね。歌詞の内容は、こういう感じにしてっていうのがあったんだよね。それを噛み砕いて書いたんですけど…まぁ、そうかもしれないですね…

自分に向けて書いてるんだけども、俯瞰して見ている人なんでしょうね、自分のことを。(miqui)

kenny: その、宗教的っていうのは、その…シャーマンみたいな…
miqui: あぁ。

シャーマン:
シャーマニズムにおける、超自然的存在と直接接触・交流・交信する役割を担う役職のこと。トランス状態に入り、超自然的存在(自然そのものや、霊といわれるものなど)と交信する現象を起こす、呪術者・巫・巫女・祈祷師などを指す。アニミズムの思想を伴っている。(アニミズム:生物・無機物を問わないすべてのものの中に、霊魂、もしくは霊が宿っているという考え方)

kenny: 物凄く、シャーマンチックな感じが、オレは、しました。
miqui: ああ、そうですか。
kenny: 沖縄のユタとか、その手の、なんかこう…
miqui: イタコ的な。
kenny: そうそう、なんかこう、自然との会話する…感じがした…
miqui: もしかしたらもともとのそういう、ハインリヒの、一番最初結成したときに作った曲から割とそういう歌詞が多かったかもしれないですね。自分ではあんまり意識していないけど、そうなのかもしれない。根底にあるのかもしれない。
kenny: なんか、コンセプトアルバムみたいな。
miqui: あ、そうですか?
kenny: 感じが。しましたね。全体的にそういう、感じがしましたね。
sugiura: ケニーさん、ディズニーランド行ったことあります?
kenny: ずーっと昔にありますね。
sugiura: ホーンテッドマンションというのがあるんですけど、あれに乗って色々潜り抜けていくと、最後に除霊するようなお姉さんがいるんですよ。
kenny: あぁ!いますいます。わかるわかる。

最後に除霊するようなお姉さん:
白い彼女、実は魔女(「リトル・レオタ」)である。「早く戻ってきて 早く戻ってきて 仲間になる決心がついたら、死亡証明書をもっておいで 今、ここで手続きしてもいいのよ あなたのことを死ぬほど待っているのだから…」と言っているらしい。ちなみに、道中にあるテーブルの上のガラスの玉の中(のオーディオ・アニマトロニクス)で「タンバリーン」と言っている人物(「マダム・レオタ」)と同一人物である。自分の使った魔術が跳ね返り、小さくなってしまったらしい。

sugiura: 結構あのイメージというか、除霊というかなんていうのかな…そういう…今までのことを総括しているような感じの、そういうイメージはありましたね。
kenny: なるほど。
sugiura: そういう意味で語りチックなものを入れてみたりとか。
kenny: 確かに語りチックだと思う。ほんと、なんかシャーマンチックな感じですよね。
miqui: 結構「自分との対話」が元々あって。今回は。で、そこから多分、自分に向けて書いてるんだけども、俯瞰して見ている人なんでしょうね、自分のことを。だから、そういう風なニュアンスになるのかもしれない。シャーマンぽいというか。
kenny: とってもスピリチュアルですよ。絶対に。そういう意味での宗教音楽みたいな、そういう感じ。
miqui: あぁ。面白い。

デジタル音楽をやっていると、逆にアナログなことを考えるんですよね。(sugiura)

sugiura: ケニーさんは写真撮るから分かるかもしれないけど、巨大な建造物とかあるじゃないですか。「よくこれを人間が作ったなぁ!」みたいなのってあるじゃないですか。そういうのを見ると、かえって「自然って何かな?」って考えちゃったりするっていうのがあって。
kenny: はいはい、ピラミッドとか見るとそうですよね。
sugiura: そう、デジタル音楽をやっていると、逆にアナログなことを考えるんですよね。寧ろその生命感であったり、何もそういうことに関わらず生きてる人間もいるわけじゃないですか。まさにその、何度もチベットと言ってしまうんですが(笑)、チベットの人達であったり、放牧民であったりとか、何かそういう生き方もありなんだろうなとか、そういうことを感じるんですよね、最近は。デジタルをやっていればこそのことだと思うんですけど。
kenny: DOMEってすごいタイムリーで…スティーブンキングって作家、いるじゃないですか。あの人がなんか「Under the Dome」ってやつを書いてて、それはある日、ある村が突然、全く見えない透明なドームを「バン!」とかぶされて…
miqui: スティーブンキングっぽい!!

スティーブンキング:
アメリカのモダンホラー小説家。ホラーばかりではなく、「スタンドバイミー」「ショーシャンクの空に」や「グリーンマイル」なども彼の作品。「日常の中のちょっとした不思議」をモチーフにした作品が多い。日本の漫画家、作家にも大きく影響を与えている。熱狂的なロックファンで、彼の映画のサウンドトラックには大物ロックバンドが楽曲を提供する事が多く、本人もバンドを組んでいるらしい。

kenny: 出れなくなっちゃうの、全く。で、外の人間も入ってこれなくなっちゃう、みたいな。で、ドームがだんだん汚れてきて、太陽とか変な色に見えてきたりとか、星とかもすごい色になっちゃったりとか、そういうすごい変な話だったんだけど。それがタイムリーで、リンクしつつ。
miqui: へぇ。
sugiura: ミストとか、見ましたけどね。
kenny: あ、そんなような感じで。霧が、こういうドームになるような感じなんですけど。
sugiura: ナンセンスな感じがありますよね。
miqui: (笑)
kenny: そうそう、「突如、起こる」みたいな。それをなんか感じたなぁ。…やっぱ、歌詞、大事ですよ。
miqui: 大事ですよね。
kenny: 大事だと思う。
sugiura: うちの場合、英詞じゃないですか。聴く上で入ってくるのはきっと響きでしかないと思うんですよね。そうであればこそ、何かキャッチできることもあるかもしれないなという。もちろん日本語でも何でもいいとは思うんですけど、あのアルバム(NOW PRINTING)に関しては、ちょっとチャレンジしてみようかなと。
kenny: なるほど。
sugiura: 元々、青い花って、もう古語だったじゃないですか。
kenny: はいはい。
sugiura: もうすでに、分かる言葉がなかったっていう状況じゃないですか。それでもキャッチしてくれる人がいると思うし。

【3】上手下手では計れない何か へ続く…


Talk List【全7回】
※掲載の写真はすべて、堀江ケニー氏によるものです。


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