Talk w/z Takashi【6】

【6】「いい音楽」の定義
miqui: なんか目標立てようよ、ハインリヒも。
sugiura・Takashi: (笑)
miqui: 目標。
sugiura: 目標ね。でも目標といえば、例えば次の作品では、こういうリズムを使って、とか、で、ギターがこういうリフでとか、何かそういう、やってみたいことは常にあるんだよね。で、それをいかにこう実現させていくかっていうところが、最も身近な楽しみというか、夢ではあって。…そうだなぁ、でも目標は、あるな。
miqui: 何?
sugiura: あのー、例えば、もう何作とかさ、作って、うーん、なんての、フェスみたいのに出たい。
Takashi: あぁ、フェスね。
miqui: 日本の?
sugiura: どこでも。
Takashi: WIREとか出たらいいんじゃないですか。
sugiura: WIRE?
miqui: あー。フェスとか行きます?
Takashi: 僕ね、行かないんですよ。
miqui: あ、うちらも行かない。
Takashi: まぁアイドルフェスは行きましたけど~。
miqui: 行ってんじゃん。
ALL: (笑)

自分の中にずっとあるのは、「音楽だから音を楽しんだほうがいいよね」って(Takashi)

Takashi: フェスは行かないですね。それこそ、フジロックとかでしょ?
miqui: そうそう。
sugiura: オレでも行きたいなって思うのは、メタルフェスとかになっちゃうんだけど。
miqui: ラウドパークとか?
sugiura: そうそうラウドパークとか、あと前にエアロとかさ、B’zの稲葉とかが出てるとき観にいって…やっぱ楽しいよね。自分の好きな音楽がいっぱい出るとさ、あ、THE WHOとかも出て…でもきっと、そういう風に音楽を自分でも楽しみたいな。
Takashi: うん、楽しみたいっていうのは、ありますよね。まぁ、ずっと前から、勇紀(sugiura)さんから言われてたことで、自分の中にずっとあるのは、「音楽だから音を楽しんだほうがいいよね」っていう。「音苦になっちゃいかんよね」っていうやつでしたし。割と、みんな、売れたい!と思っている人達が陥るんですけど、とはいえ、苦しんででも、ポップなものを作って、一回受け入れられなければ、喰っていけない、勝てないっていうことに陥るじゃないですか。で、音楽を、音を楽しむっていうことを、「そんなのキレイゴト」って言ったりとかする人達も多いんですけど、オレは、それでいいと思っているんですね。音楽、音を楽しむということでいいと思っているんです。「楽しい」っていう風に思えることと、世の中が求めるものが、リンクする場所ってあると思うんです。
sugiura: 絶対そう。そこそこそこ。それ大事。
Takashi: うん。
sugiura: それ今すごい、いいこと言ったよ今。
Takashi: あ、ありがとうございます。(笑)
miqui: (笑)
sugiura: まさにそうなんだよ。だからその自分自身が、その楽曲に対してファンじゃなかったら、絶対に受け入れられないと思うよ。それが好きじゃないとかさ、こんなのダメダとか思いながらやっていても、それを感じ取るのは聴いてくれる人だと思うんだよ。その本質みたいなところを絶対に感じるから、中身であれさ。だから自分自身が、いい!と思って、打ち込めば、どっかしらで絶対に感じ取ると思うんだよね。それをネガティブな気持ちでやってしまうと、やはりそれもどっかで感じ取る人が出てくる。仮にその状況の時に受け入れられたとしても、いずれそこが大きな溝になる。
Takashi: やっぱり楽しくやるべきですよね。まぁ満たすのは大変だと思うんですよね、何をやるにしても。みんな大変だと思うんですけど、でも出来上がったものが自分の中で楽しいものであってね、いいものであることじゃないと、ダメだなっていう。
miqui: ほんとそう。
sugiura: そうそう、自分がいいと思ったところと、人が聴いていいと思ったところが、ちょうど合ったところが、あると思う。
Takashi: そう、だから、そこがブレイクポイントみたいなとこなんだと思うんですよね。
sugiura: 絶対そうだと思う。
ALL:
sugiura: そういう風に思ってないと、やっていけないしね!
Takashi: まぁね。
ALL: (笑)
Takashi: それは絶対ある(笑)…自信っていうものもそうだし、自分がすごく好きだっていうこともそうなんですけど、自信って言ったらあれなのかな、上から目線っぽいかもしれないけど、でも自分が作ったものは、常に、好きだし、
sugiura: そういうのが伝わる音楽だったよ。
Takashi: ほんと?ありがとうございます。なんか、こう、みんなに「変わってるね」って言われるんですけど…自分の作った音楽をiPodに入れて、自分の作った音楽しか聴いてない時とかあるんですよ。
sugiura: あぁ。
miqui: それ、でも、すごく、いいね。
Takashi: うんうん。
miqui: いいじゃない!それってすごく。健康的というか、
Takashi: そう、この前の「なないろファンタジー」とかも、エンドレスでそれだけずうっとループしてるとか、「いい曲だな」って。
miqui: (笑)
Takashi: (笑)
sugiura: いや、よく出来てるよほんとに。
miqui: え、結構それって作ってすぐそうなれる?
Takashi: ええっと、途中一回悩むんですよね、やっぱり。
miqui: え、できあがって、完パケてからってこと?
Takashi: いや、完パケてからは悩まないですね。
miqui: あ、もう「出来たーっ」って、で、大丈夫?受け入れられる?
Takashi: だってもう出ちゃうじゃないですか、それって。まだ完パケで、世には出してないんで、ようはライブで使ってる音源とか、あと自分が今後ミックスしていくもの…実は今日までである程度はミックスが終わっていて、あとはマスタリングだけなんですけど、そこまできちゃうと、もう悩まないですね。途中でやっぱり、「大丈夫かな?いいのかな?」って思うときはあります。もちろん。もちろんありますけど、でも、初動、自分が作り始めたときの気持ちっていうのは、もう、変わらないじゃないですか。その中で。
miqui: その瞬間で!
Takashi: そのときに、このメロディで行く!って決めて作ったものはもう変わらないし、このアレンジでいく!って決めたものは変わらないから、あとそこからいじっちゃったりすると、多分見えなくなるから、
miqui: うんうんうん、わかる。
Takashi: なんか一発目の感覚信じたほうが…
miqui: そうなんだよね。
Takashi: いろんな作り方の人がいるから…もうマスタリングしちゃってから、今家で出来るじゃないですか、みんな。外でやらないから、自分の家でマスタリングまで終わらせて、聴いてみて、「いやっ!?」って言って、MIDIまで戻る人とか。

MIDI: 「Musical Instrument Digital Interface」の略。シンセサイザや音源とパソコンを接続して楽曲データをやりとりするための規格。音色、音程などのデータを送受信する手順が定められている。DTMで楽曲を作る上で、一番最初の工程をこのMIDIで行なう。下書きのようなもの。

sugiura: え!?いる!?いるの?そんな…
miqui: え?MIDIまで戻るの?
Takashi: ようは自分の、「ここが気に入らない!」っていうのが出てきちゃったりとか、
sugiura: 終わんなくね?

Takashi: そう。でミックスまで戻って、何やって、っていうのを繰り返しちゃう。
sugiura: まぁそれで人に迷惑かからないんだったら、それでいいのかもしれない。
Takashi: まぁね、自分の家で作ってる分にはね、そうですけど、ただ、ここまでの工程はここまでの工程でもうここで終わってるっていうところで決めていかないと、オレ終わんないから、「もうここで一番かっこいい!大丈夫!」って決めちゃうんです。で、もうここまで作ったものをオーディオ化して、ミックス始めたらもうMIDIには戻らん!絶対。
sugiura: そこからはもう別の作業になるよね。
Takashi: そう、ベースのフレーズとかも、「ここもっと動けばよかったかな」と思っても、もう戻らん!っていう風にして、
miqui: そうなんだよね。一回出来上がってるから、「あそこ、ああすればよかった」っていう意見が出てくるけど、出来上がってるから初めてそれが出てくるわけだもんね。「こっちの道もあった」みたいな。
Takashi: そうそう、でもそれは次やれば、ね。
miqui: そう!すごいね!そうだよね、ほんとそう思う。
sugiura: 全く、ほんと、日頃同じこと考えてるね…
miqui: 全く同じ。(笑)
Takashi: 意外と戻りたくなるし、
sugiura: モチベーションがあれば、もう一曲書けばいいしね。
Takashi: そうそうそう。
sugiura: 同じような感じのテイストの、
Takashi: 本当にそれをね、やりたいと思うなら、もう一回やればいいし。っていうのはあるけど。それはそれで作品として出来上がったものだな、という風に、捉えるようにしています。で、結果、最終的に出来上がると、意外と自分が好きな曲なんですよね。
miqui: あぁ、そっかぁ~。

ボーカルが入ってきたり、ギターをダビングしたりするとさ、予想外のことが起こってくるじゃん。それがまた楽しかったりするんだよね。(sugiura)

sugiura: まあね。あとはそれで聴く人が聴いて、何かしら思ってくれればそれでね、いいなと思うよね。
Takashi: 自画自賛はするんですよね。自分の曲が好きで、これがいいっていう風に思ってるから、自画自賛は一応するようにしてるんですけど。「オレはいい曲書いた」「みんな、いい曲書いたよ」ってツイッターとかで言っちゃったりするんですけど、それを受け取る人がいいと思うかどうかは、それは自由…
miqui: そうだよね。
Takashi: ただ、「オレは、これ、好き」っていう。
sugiura: もちろんそう。最初に、オレなんかさぁ、コードとメロしか書かないのよ。適当なループつっこんで、でそれを4トラックくらい録って、デモ終了なんだけど。もうそのあと本チャン録りに入っていくんだけど。その時点で、「最高だッ」って思える一瞬があれば、絶対にいける!みたいな確信を持って打ち込むから、結局そういうのが最初にあれば、絶対に完成させられるし、いいものが上がるんだよね。さらにそこに人が入ってくる…ボーカルが入ってきたり、ギターをダビングしたりするとさ、予想外のことが起こってくるじゃん。それがまた楽しかったりするんだよね。
Takashi: そうですね。
sugiura: なんかもう…最初の時点で決まってるよね。ほんとに。戻ることは無いな。
Takashi: 発注されたものであっても、こういう風にしようとか、こういう風に作ろうって思ったときの、初めの衝動っていうかパワーがあるから、そこですよね。それを信じるしかないからなぁと。まぁ細かなテクニックとかは色々まだ僕も全然なところもあるし、色々あるんですけど、それよりも多分最初の衝動かなっていう。
sugiura: そうそう。
Takashi: それが最終的な形に、達成されていれば、いいじゃないって思う。
sugiura: そうそう、そのテイストって絶対残ってるはずだしね。大事だよね。それが失っちゃうとほんとになんだかよくわかんないものになっちゃうからね。

Takashi: そう、だから多分若い人達ってそこで迷ってる人多いなって、最近見てて思って。「いいもの作りたい」っていうものとか「かっこいいもの作りたい」とか「売れるもの作りたい」とか色々まぁ達成のところはあると思うんですけど、そこに惑わされちゃって、初めに「作ろう!」と思った気持ちがここまで持続していない
sugiura: ああ、なるほどね。すごい興味深い話だなー。
Takashi: 多分、最後まで持続していないんじゃないかなぁっていう、
sugiura: うーん
Takashi: なんだろうな…音源が良くなってきて、みんな音源とかに頼った部分もあるし、そこに惑わされちゃってる。いい音とか、音圧とか、そういうところにすごい惑わされてる気がして。それは結果論であって、もともとの衝動っていうのを形にするのは別に音圧が小さくったってかっこいいものはかっこいいと思うし、
miqui: そうね!うん。
Takashi: 最終的には。ただ製品として売っていくときに、他のものと圧倒的に音圧が違うとかいうのを避けるために、そこはがんばりますけど、それは他のと一応肩を並べるために、やっている作業であって、
sugiura: でもね、適材適所というのがあると思うし、削らないものは削れないんだよね。だから、そこは平均的な、そうだな、例えばマドンナのエンジニアとかさ、音圧を最終的に上げることを要求されるんだけども、「出来ればやりたくない」って書いてあったからね。「なぜなら、本来の音じゃないからだ」っていう。すっごくわかるじゃん。やってる側からするとさ。「こうなっちゃいましたか?!」っていうくらい変わるからね。
Takashi・miqui: (笑)
sugiura: でもいわゆる自分が聴いても違和感ないっていうくらいにとどめておくべきだとオレは思うけどね。
Takashi: 最近はもう、邪道なやりかたですけど、
(暫く音圧を上げるやりかたの話が続きます…)
Takashi: 悩まないようにしてます。なんか僕は、言い訳も含めて、「僕、だってエンジニアさんじゃないし」っていう答えを自分の中に持っているので、「これが僕の限界です」っていうところでとどめるようにしています。これを追求しているときりが無い。
(しばらく知人のエンジニアさんのすごさを語っています…)
sugiura: (マスタリングやミックスは)超難しいね。曲書いてるほうが楽だもん。
Takashi: 絶対そうですよ。曲はいっぱい書きたい。
ALL: (笑)
sugiura: これで他の人に任せたら、もうちょっとがんばれるのになって思うもん。
Takashi: 僕もそう思う。だから今の音楽業界の事情がそうじゃないですか。結局は。ね。おうちで全部やってくださいって。
sugiura: 最終的にそこ(マスタリングやミックス)まで出来るやつが勝っちゃうっていうのがあるよね。
Takashi: そうあってほしくないんですけどね。
sugiura: 餅は餅屋だからね。それだけをやってるヤツにはかなわないもん。
Takashi: だし、それだけをやってて、技術がそれだけある人達のお仕事がなくなってしまうことほどもったいないことはないと思ってて。その人達が離脱しなきゃいけなくなっちゃう状況はイヤだなと思ってて。
sugiura: そうだね。…ただね、その曲を人に届けるってことが一番大事だからね。だからそこまで(自分で)やらなきゃいけないのかなって思う。
Takashi: そうですね。だから僕も今はそういうふうにやらざるを得なくて。やってますけどね。
sugiura: でもコンポーザーはさ、その楽曲に対して一番厳しいはずなんだよ。他の人間(エンジニア)のほうが確かに、その例えばマスタリングにせよ、ミックスにせよ、うまいかもしれないけど、そのコンポーザーが間違いなくその答えを持っているはずだから、まぁだからこそ難しくて、譲れないところもあるんだけど、一番結論に近いものを打ち出せる一人だと思うけどね。
Takashi: そうですね。確かにミックス感とかは出ますからね。この音が立ってなきゃいやだ!っていうのがあるとしたら、「普通そこ立てねぇよ、いいじゃん裏方で」っていう音を立てたくなったりするじゃないですか。それだと自分にしか答えがないから。
sugiura: そう、だから絶対そこになきゃいけないものはなきゃいけないものだし…もうTDってさ、足していく作業じゃないじゃない。基本削っていく作業だからさ、削るのってさ、だって、いてほしいからそこ作ったのにさ、削らなきゃいけないわけじゃん。超難しいよね。
Takashi: 難しいですね。
sugiura: 断腸の思いでやるからね。ほんとに。とりわけキックのLOWとかね。超難しいよね。
Takashi: キックのLOWはね、いてほしいんだよなぁ。
sugiura: マスタリングするとそこがめっちゃ喰うからね!削らざるを得ないんだけどね…
(しばらくLOWをどこまで切れるかの話)
sugiura: Takashiとこういう話が出来るようになったのか…勉強したね…
Takashi: 多少は(笑)

【7】Takashi’s Recommendに続く…


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