Talk w/z フランク重虎(VALKILLY)&KIRIA【3】

【3】殺人的マスタリング術・sugiuraとフランク重虎の共通点

もう、21世紀のワーグナーになろうと思って。(フランク重虎)

sugiura: さっき楽屋でね、(フランク重虎氏と)話してたら、「あれ、イエスのフレーズだよね」って話になって。…わかってくれるんだよね、そういうパロディが(笑)
miqui: そうそう、笑って作ってるんだもんね、いつもね。
KIRIA: (sugiuraとフランク重虎氏が)分かる世代!
sugiura: だって、靴が同じですもんね。
フランク重虎: そうそう(笑)
KIRIA: あ、こないだも楽屋で(笑)「あ!」みたいな。
フランク重虎: この、ボンクラしか買わない靴!エイリアンの靴(エイリアンスタンパー)なんて、絶対ボンクラしか履かない(笑)

エイリアンスタンパー:映画「エイリアン2」(1986年)で、主人公が履いていたスニーカー。リーボックが市販用にアレンジして発売。カラーバリエが豊富にある。sugiuraは白。フランク重虎氏はトリコロールを愛用。

miqui・KIRIA: (笑)
sugiura: いや!いいぜ、リーボック!だって、リーボックはビョークも履いてるもんなぁ!
miqui: 履いてるね。でもエイリアンはね…エイリアンスタンパーはね(笑)
sugiura: そういうグッズが好きなんだよ。
フランク重虎: わかります、わかります。
miqui: 何かに付随してるものね。…あの楽屋の盛り上がりは忘れられないもん。
sugiura: まず、音楽的じゃないところで、もう一致してる(笑)
KIRIA: 「そこなんだ!?」みたいな(笑)
miqui: 面白かった。
sugiura: そのマスタリング感とか、ほんとに素晴らしかった。
フランク重虎: あ、まじっすか。いやいや、もう…いつもマスタリングするときは、どうやって人をぶっ殺そうか考えながら…
全員: (爆笑)
フランク重虎: 凶暴な音をこう…
KIRIA: 凶暴!そんなこと考えながら作ってるの!?
フランク重虎: もう、21世紀のワーグナーになろうと思って。
全員: (笑)
miqui: 名言キタ。
KIRIA: 名言でちゃった!(笑)
フランク重虎: そのくせ、EQは妙に慎重にフィルタリングしたりとか。ベースはここくらいまでで切っちゃおうとか。

切っちゃおう:EQで音を削ること。低い音(Low)や高い音(High)を調整すること。

sugiura: その技術は僕にはなくて、感覚的にしかやれていないから。すごいなって。
フランク重虎: いや、アカデミックにやっても、感覚的にやっている人を見て、「こういうのがあったか!」と思うのが結構あるんですね。
miqui: あぁ…
フランク重虎: プロディジーの曲とか、ほとんどそうじゃないですか。
sugiura: そうですね、結構…ヘタしたらなんにも切ってないかもしれないですよね。
フランク重虎: そうですよね(笑)結構外人でそういうのいるんですよ。で、日本だと、メジャーのCDとして出すときの、音質の基準みたいなものが決まっているじゃないですか。Highはこのくらい出ていないといけないとか、Lowはこのくらいだとか。そういうのが、向こうはないじゃないですか。「このCDは…なんだ!?」っていうような感じで。割ともっと日本のメジャーも、それがスタンダードじゃないですけれども「そういうのは自由にやっていいんだ!」というのが標準化されたら、もっと面白いんじゃないかなって思うんですよね。
sugiura: 確かに確かに。向こうのドラムンベースとかは、いわゆる昔で言うハウスの延長上なんですよね。
フランク重虎: ええ。
sugiura: なので、DTM内でパッキングできる音で作るというのが、多分前提にあるんだと思うんですよ。例えば国内だと、日本の中だと、インディーズでもそれが許されないところがあって。
フランク重虎: そうなんですよ!そうなんですよね!またそれが、聴いている人が、そのメジャーの音質のある程度の出方っていうのを知っちゃってるもんですから「なんか素人っぽいね」とか言っちゃったりするんですよね。すごく面白い感じに出来ているのに。
miqui: あぁぁぁ!
フランク重虎: 要は、「あるプロとしての基準」とは(音の感じが)違うから、素人っぽい(と思ってしまう)。それ(「あるプロとしての基準」)以外が。だからもし、プロディジーが無名だとしたら、全く同じアルバムを日本で出したとしても、「コレ、なに?!」って言われちゃうと思うんですよ。
miqui: (笑)
sugiura: ドラムでかすぎるよ!って(笑)
miqui: なるほど。
フランク重虎: その辺の柔軟性みたいなものがもっと磨かれたらっていうので。もっとメジャー(のアーティスト)が「おかしなマスタリング」を、「自分達の自由にやったマスタリング」の作品をいっぱい出したら面白いな、と思いますね。
sugiura: つまり情報から入っちゃってきてるんですよね。「かっこいいバンドがある」っていう(情報から)。その音を聴く前に。
フランク重虎: そうなんですよ。浅いアカデミックになってるんですよね、みんな。
miqui: なるほどなぁ。
フランク重虎: 日本の音楽でも、メロコアとかエクストリーム系は平気で結構やるんですよね。その他は割と、そうでもないというか。
sugiura: 確かに。
フランク重虎: だから僕はできるだけ…ギャラ云々とか印税とか全くいらないんで、できるだけ、広いところにそういうメチャクチャな、というか、自由にやったものを出していけたらな、というのがありますね。活動していて。
sugiura: そうなんですよ。スタンダードなものって本来そうやって作られてきたはずなんですよ。絶対に前衛なヤツがいた。ただそういうレールに追尾する習性があるじゃないですか。ぶっちゃけた話をすると、世の中がParfumeとかCapsuleがかっこいいってなると、追尾し始める傾向があって。なんていうのかな…インディーズだったら、本来あるべき姿というのは、そういうのがあるから「じゃあオレ他のやろう!」みたいな感覚になっていいと思うんですよ。もっと違うものを提示していく。ハインリヒのコンセプトってそこなんですよね。みんなが多分こっち行くだろうから、じゃあ…それが望まれているかどうかよりも、まずは打ち出してみようって。
フランク重虎: そこが感動したんですよ、このアルバム(NOW PRINTING)の!すんごいイケてるんですよ。もう一ミリも媚びてないところがいいんですよ。
miqui: (笑)
フランク重虎: パロディはあるけど、媚びてない。パロディと媚はまた違いますからね。
KIRIA: やりたいこと、やりました!っていうのが。
sugiura: それが伝わるのがうれしいね。
フランク重虎: 「それが伝わるのがうれしいね」って言われて…それをそういうふうに言う必要があるという、その状態が悲しいですね。
miqui: ああ…
フランク重虎: そういうのは分かって当然!というところがありますよね。
全員: ああ…
miqui: なるほどなぁ。

「もう何出てきてもおかしくないや」っていう状態になってきてるな、っていうのはありますよね。(フランク重虎)

フランク重虎: リスナーを責めないというのが僕はありまして。さっきの「前衛があって、今普通になってるじゃん」っていうのが何個も出来たっていうのがあるじゃないですか。ということは、今、もうレールがひかれすぎちゃってるんですよね。あらゆるジャンルの方向に。だからもう「前衛にやろう」と思っても、スキマがないくらいに入っちゃって。で、レールがひかれているっていうことは、全てのスタンダードがもう出来ちゃって、教育できるようになっちゃってるじゃないですか。だから、さらにその前衛となると…っていうと…
sugiura: こないだ、アニマトリックスの森本(晃司)監督とちょっとお話したんですけど、彼が「僕はマイナーなことをメジャーにしたいんだ」とおっしゃってたんですよ。
フランク重虎: パンクですね。
miqui: (笑)
sugiura: だから、もう、次元がちがうな!という感じがあって。

アニマトリックスの森本(晃司)監督:日本のアニメーター、アニメーション監督。STUDIO 4℃所属。アニマトリックスでは、「Beyond」という作品を担当。miquiがお気に入りの猫の作品で、友人用にもDVDを買い、振舞ったほど。そのほか、「MEMORIES/彼女の想いで」、ケン・イシイや元気ロケッツのミュージックビデオ監督、AKIRAの作画監督としても知られている。
森本晃司関連サイト>>SUGIURAND(2011年8月20日「これでいいのだ」)

フランク重虎: 最近いい傾向なのが、今まで後ろめたくやっていた、いわゆるヲタだったり、コスプレだったり、今までアンダーグラウンドと呼ばれていたものが、かなりどんでん返しで今市場としていい状態になるから、メジャーにいっちゃってるじゃないですか。その勢いで「もう何出てきてもおかしくないや」っていう状態になってきてるな、っていうのはありますよね。例えば、コミケがあれだけの市場になったり、M3があれだけの市場になったり。もう…あと数年かなと思うんですよね。いい状態になるまでに。とにかくそれまで、辞めずに続けないとな…というのがありますよね。

M3:音系(音でなにかを表現しようとする全てのサークルの総称)即売会のこと。>>公式

sugiura: 大事ですね。すごく大事。現状、続けているとやっぱり苦しい状態ってどうしても出てきちゃうと思うから。その時に考えすぎてしまうと、活動することができなくなってしまうんですよね。モチベーションが保てなくなってしまうというか。だからどこかで「オレはかっこいいことやってるんだ!」みたいなものがないと、やっていけないですよね。
フランク重虎: 辞めないための、仲間がほしいというのがありますよね。
sugiura: ほしいですね!(笑)
miqui: だから、対談もやってる!みたいな(笑)
KIRIA: (笑)
フランク重虎: だから、出会うと余計に嬉しいんですよね(笑)
miqui: そう!(笑)
フランク重虎: 自分の寿命もちょっと延びた!っていう。
KIRIA: もうちょっと生きれるな!っていう(笑)
miqui: そうそう(笑)
フランク重虎: ああ、よかった。一人じゃなかった!っていう。
miqui: うんうん、そうだね。
フランク重虎: だからうちもライブとかで、例えばハインリヒさんとVALKILLYが対バンでやるというよりかは、曲でも、一緒にやった状態のものをリリースしたいとか、そういうのをやりたいなと僕はすごく思っていて。
miqui: ああ!
フランク重虎: 今日ライブ見て、特にそう思った。しかもVALKILLYに関しては、決まったボーカルがいない!っていう状態ですので(笑)
KIRIA: 確かに。
miqui: ね!それ驚き。
sugiura: そういうコラボとかもありですよね。
フランク重虎: これから、どんどんそういう感じでやっていきたいなって思ってるんですよ。
KIRIA: やりたいやりたい。
miqui: 絶対楽しいでしょ。
KIRIA: 私、攻殻(機動隊のサントラ)っぽい、民族まじりの曲すごい好きで。
フランク重虎: ブレイクビーツでしょ。
KIRIA: 一緒にやりたいなぁと。
miqui・sugiura: 是非是非!
KIRIA: すごい…もうどストライクですから。ほんとにもう。
miqui: ありがとうございます。ほんとありがたいね。
sugiura: うん。

【4】映画と音楽~ブレイクビーツと攻殻機動隊~へ続く…(2011/7/9公開)


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